歴史の狭間に埋もれた偉人・カルシュ博士について

大正14年より14年間にわたり、旧制松江高等学校(現・島根大学)で教育に力を注いだドイツ人哲学者フリッツ・カルシュ博士がいます。彼は、日本の哲学や宗教の研究家で教育者であり、昭和15年から5年間は外交官でもありました。彼の薫陶を受けた著名人には「長崎の鐘」で知られる永井隆、免疫学者の奥野良臣をはじめとする科学者、著名な政治家の赤澤正道、福永健司細田吉蔵、それに文学者、法律家、外交官など枚挙に暇がありません。当時朝鮮、台湾からの学生で戦後に故国の復興などに尽力した有能な医師、技術者などもあげることができます。ラフカディオ・ハーンと並ぶ功績を残した同博士は、数多くの優れた風景パステル画、歴史的写真、それに専門著書、関連図書と膨大な未整理の研究原稿残しています。戦中・戦後の混乱により歴史の狭間に埋もれた偉大なカルシュ博士について、その足跡が広く国民に知られることを心から念じ、1999年以来、日本国内、ドイツおよび米国で蒐集した関連資料の永久保存のために、歴史的価値のある松江市奥谷町の旧住居を記念館として改修・復活する呼びかけを行ってきました。